高速道路沿いの建物は高層階と低層階のどちらが静かなのか
よく「高速道路沿いは高層階より低層階の方が静か」だと耳にすることがあります。 そこで今回、実際に検証してみました!
↓動画でのご紹介はこちら!
今回検証するのは高速道路の真横!8階建てマンションの2階と7階です。
騒音計を使用して計測していきます。
2階(路面より少し下)
65.1db
ということで、およそ60~65dbという結果になりました。
これは、
・目覚ましのベル
・TV、ラジオの音(中ぐらい)
・洗濯機
・トイレの排水音
・デパートの中
・走行中の車内
と同じぐらいの音の大きさになっています。
目覚ましのベルが四六時中鳴り続いている状態と考えたらなかなかシビアですよね。
続いては7階で計測していきます。
7階(路面よりも上)

72.0db

77.0db
70.8db
こちらはおよそ70~75dbという結果が出ました。
ダンプが通った際には77.0dbとかなり大きい音が測定されました。
70dbというと、
・蝉の鳴き声(至近距離)
・TVやラジオの音 (大音量)
・掃除機
・電話のベル
・騒々しい事務所内
・やかんの沸騰音
と同じぐらいの音の大きさになっています。
このように、7階の方が音が大きく、約10~15dbの差が出ました。
今回、音の例えは指標の1つとして提示しましたが、実際は音の感じ方はその音の「不快さ」でかなり左右されます。例えば潮騒は70dbなので今回の7階での測定値と同じぐらいですが、車の走行音に比べると極めてストレスは少ないでしょう。
逆に、かなりうるさく聞こえる目覚まし時計のベルは60dbで、TVやラジオと同程度、あるいは下回る場合もあるぐらいです。
このように、その音に対してどのくらい不快感を抱くかによって音の気になり方も変わってきますので、音の例えはあくまで参考程度にお考えください。
以上のように、高速道路沿いはやはり低層階の方が静かであることが証明されました。
この理由は高速道路の構造にあります。
高速道路には両サイドに防音壁がついており、通常はこの防音壁が車の走行音などの騒音を吸収する役目を担ってくれているのですが、マンションのお部屋などが高速道路よりも高い位置にある場合、お部屋に対してダイレクトに高速道路上の音が伝わってしまいます。このため、どうしても高層階の方がうるさく感じてしまいがちなのです。
近年では防音壁も変化を見せており、以前はただ道路に分厚い壁を置くことで道路上の音を遮断するという方法をとっていたのですが、それだけでは音の回折(障害物にぶつかると回り込む性質)が起こってしまうということで、防音壁の中に吸音材を仕込むことで騒音を軽減しようという考えが生まれました。
すると今度は吸音のため通気性を重視した構造が裏目に出て、コストは下がったものの、走行時の風圧によって表面材がめくれ中の吸音材が剥き出しになってしまい、その結果防音の性能が下がってしまうという問題が起こりました。
そこで新たに開発されたのが、強くて軽いハニカム構造を利用した防音壁です。
ハニカムとは英語で「蜂の巣」を意味し、正六角形を隙間なく並べた構造をしています。
これによって、「ハニカムの芯材に吸音材を充填し、表面材をハニカムの芯材で固定する」ことで風圧で表面材がめくれ上がらず、かつ吸音性能も維持されるという、高い防音性と維持性の両立に成功、さらにそれによってメンテナンスコストを抑えることにも成功しました。
また、景観の向上や道路上の明るさを確保するためにポリカーボネート製やアクリル製などの透明の防音壁が増えてきています。
従来の防音壁は吸音材を詰め込んだ分厚い壁だったため、道路内は暗く、昼間でもライトをつけて走る車も少なくはありませんでした。
さらに近隣からは「店の看板が防音壁で遮られる」などの声もありました。
そこで自動車のヘッドライトカバーなどに使用されるポリカーボネートを使用して、耐衝撃性に優れた透明な防音壁が投入されました。
これによって道路上は明るく見通しも良くなり、高架下にできる影の範囲も小さくなりました。
しかし、この透明の防音壁は従来の鋼製のものに比べコストが高くなるだけでなく、防音製も劣っているという欠点を持っています。
鋼製の壁は内側に吸音材があるので音を吸収することができますが、逆に透明の壁は音を反射してしまいます。
このため、透明の壁と鋼製の壁を併用するのが現在の主流になっているようです。
透明の防音壁しかない高速道路の近隣は特に騒音の注意が必要かもしれません。
高層階にせよ低層階にせよ、高速沿いの物件に住む際には事前に十分な確認をしておくことが大切です。
前述のように、騒音の受け取り方は人次第でかなり変わってきます。
「慣れれば気にならなくなる」という方もいれば「うるさくて眠れないので引っ越した」という方もいらっしゃるかと思います。後者の場合、事前にリサーチしておかないと健康被害や無駄な引越し費用など大きな損失を出すことになってしまいます。
特に高速道路は、決まった時間で運行する鉄道や飛行機と違って、夜でも多くの車が走る場合があるため、常に騒音との戦いになってしまう可能性があります。神経質な方は十分に気をつけてチェックしておくべきポイントでしょう。
高速道路の音がどれぐらいうるさく感じるのかは実際に内見に行った際にお部屋の窓やバルコニーから確認しましょう。
窓の性能によって家の中で聞こえる騒音は変わってきます。
高速道路沿いであれば二重窓、二重扉が設置されている物件もあります。
そういったお部屋は高層階でも窓を閉め切ってしまえば車の音はあまり気にならないということもあるでしょう。
また、バルコニーが道路側を向いていると、音を拾って反響しやすいそうです。
時折「窓を閉めていても騒音が気になる」という場合がありますが、こういったケースの多くはエアコンの室内(外)機や台所の換気口などの隙間から音が入ってきていることが多いようです。
こういった隙間を閉じることはゴキブリなどの害虫の対策にもなりますので、ご入居の際はぜひやっておくべきでしょう。
こういった話をしていると、どうしても高速道路沿いの住宅に悪いイメージがついてしまいがちですが、高速道路沿いに住むことはデメリットだけではありません。
例えば、
・交通面
車をお持ちの方は家が高速道路に面していると、遠方に行くのも近くに行くのもスムーズ。
車を持っていない方でも、通行量の多い高速沿いはタクシーを捕まえやすい。
・利便性
高速沿いは大型商業施設や公共施設が建ちやすい。また、駅近物件に比べて家賃が抑えられることが多い。
・防犯面
住宅街に比べ、街灯や通行量が多いので夜道も安心。
など、便利な要素が多いです。特に、車通りの多い日中を家以外の場所で過ごす方は高速道路沿いを考えてみてもいいかもしれません。
ただ、排気ガスや車が通る際に巻き上げられたほこりが多いという点は否めません。お子様がいらっしゃるご家庭や、室外で洗濯物を干すご家庭は十分な配慮が必要です。
排気ガスやほこりなどは低層階に溜まってしまうので、特に低層階を内覧される際にはバルコニーなどの汚れの度合いも気をつけてみておくべきでしょう。
今回、高速道路沿いの高層階と低層階の騒音問題についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
高層階の方が音が大きく聞こえてしまう一方で、低層階は排気ガスや道路上のほこりの影響が大きいという問題もありました。
窓を閉めれば音は気にならないか、室内干しはできそうか、などお部屋探しの際にしっかりリサーチしておくことが大切です。
一般的には避けられがちな高速道路沿いですが、利便性の高さや家賃の安さなど、魅力的なポイントもあります。
自分にとって何が重要で、何を妥協するか、ご自身のライフスタイルと相談しながらお部屋探しを進めましょう。